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北米の若者の間で絶対的な人気を博し、日本でもタバコの代わりに吸う人が増えているCBDを使用したべイプですが、先日アメリカ・ニューヨーク州にあるRoswell Park Comprehensive Cancer Centerの研究者たちが、CBDべイプはニコチンべイプよりも肺に与える損傷が大きいという研究結果を発表しました。今日は、その最新の研究結果をご紹介したいと思います。
様々なCBDオイルの利点に関しては、こちらの記事をご参照ください。
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CBDの合法性
CBD(カンナビジオール)には、脳に影響を与え高揚感や陶酔感など「ハイ」な状態にする向精神作用が無いため、THC(テトラヒドロカンナビノール)のような日本で禁止されている薬物ではありません。欧米では0.2~0.3%までのTHC含有量は産業ヘンプと見なされ、アメリカでは2018年に産業ヘンプの合法化が認められました。他にも、医師によるCBD処方薬は現在Epidiolexというてんかんに効くCBD薬が食品医薬品局(FDA)により認可されています。その他にも合成CBDとTHCの処方薬、nabilone、dronabinolなどがFDAにより認証されており、合成CBDとTHCの混合薬であるSativexは、アメリカでは現在治験中ですが、カナダやヨーロッパでは認可されています。日本では完全に検知不可能なゼロTHC製品のみが厚生労働省の審査・認可を受け、日本に輸入されています。
べイプとは
電子タバコなどのべイプ器具から発生するエアロゾルを吸引することを意味します。べイプはタバコのように火を使って燃やすのではなく、ベイプ器具が液体を加熱してエアロゾル粒子(気体中に浮遊する微小の液体)を発生させます。べイプ用液体には次のような成分が含まれています。
- フレーバー/香料
- ニコチン:ニコチンべイプに使われる。
- ビタミンB12:ビタミンべイプに使われる。
- CBD(カンナビジオール):CBDべイプに使われる。
- プロピレングリコールとグリセリン:エアロゾルを発生させる。
フレーバーやEリキッドには次のような成分が含まれていることがあります。
- アセトアルデヒドやホルムアルデヒドなどの発がん性物質
- アクロレイン、ジアセチル、ジエチレングリコールなどの肺疾患を引き起こす可能性のある化学物質
- 肺の損傷と関連のあるビタミンEアセテート
- ニッケル、スズ、鉛、カドミウムなどの重金属
- 肺の奥まで入り込む超微粒子
べイプの利点
べイプには次のような利点があります。
- タバコよりは含まれている有害物質が少ない
- タバコよりも安い:べイプ器具はタバコより高価でも、長期間の使用を考慮すると最終的にはタバコよりも安価になる
- タバコよりもニコチンの摂取量をコントロールできる:ニコチンガムやパッチよりもべイプの方が約2倍効果的だと示唆する研究もある
- タバコの副流煙よりもべイプの副流煙の方が危険度が低い
- タバコの煙ほど臭くない
- フレーバーや質など選べるオプションが多い
- タバコの禁煙に役立つ
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べイプの危険性
べイプはタバコよりも「安全」だと思われがちですが、必ずしもそうだとは言えないようです。べイプには次のような危険性があります。
- 喘息:喘息や他の肺疾患になる可能性が高くなる。
- 肺の損傷:ジアセチルなどフレーバーに使用される化学物質は、閉塞性気管支炎を引き起こす可能性がある。
- 臓器の損傷:Eリキッドに含まれるニコチンやその他の物質は、心臓や脳に損傷を与える可能性がある。ニコチンは、脳の発達を阻害し、血圧を上げ、動脈を狭くすることが判明している。
- EVALI(電子タバコ、べイプ製品使用による肺損傷):下記参照。
- 中毒性:ニコチンには高い中毒性があり、脳に変化を起こすためニコチンへの欲求度が上がる。
- タバコの喫煙:べイプを吸う人の多くが最終的にタバコの喫煙へと移行することが研究で示唆されている。
- 二次暴露:べイプはタバコのように煙を出さなくても、周りの人がべイプに含まれているニコチンやその他の化学物質にさらされる可能性がある。
- 爆発:べイプ器具のバッテリーが爆発し、重症や火傷を負う事故が発生している。
- ガン:Eリキッドに含まれる成分の中にはガンを引き起こす可能性のあるものがある。
べイプによる肺損傷(EVALI)が原因で2019年~2020年の間にアメリカで68人が死亡したと報告されています。また、べイプに含まれる化学物質により胎児の体重減少、胎児の肺および脳損傷を引き起こす可能性があるため、妊娠中または妊娠の可能性がある人はべイプの使用をやめましょう。
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EVALIとは
EVALIとは、「e-cigarette, or vaping, product use associated lung injury(電子タバコ、べイプ製品使用による肺損傷)」の略称で、べイプ製品が原因で起こる深刻な肺疾患です。一部のEリキッドに含まれるビタミンEアセテートが原因である可能性があると報告されています。EVALIの症状には以下のようなものがあります。
- 咳
- 息切れ
- 胸痛
- 発熱
- 嘔吐
- 下痢
- 胃痛
- 動悸
べイプの副作用
べイプの短期使用には次のような副作用が考えられます。
- 咳
- 息切れ
- 目の炎症
- 頭痛
- 口や喉の乾燥と炎症
- 吐き気
べイプによる肺損傷は治癒できる?
べイプによる肺損傷の中には薬の投与で良くなるものもありますが、肺についた傷は永久的で、時間の経過と共に喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)のような慢性疾患のリスクが高くなる可能性があります。
CBDべイプの最新研究
上記はCBDだけでなく、ニコチンやビタミンなどを含む全てのべイプ製品に関する利点とリスクですが、これまでに出ていた研究データはほぼ全てがニコチンべイプを対象としたデータでした。しかし、2023年2月27日、アメリカ・ニューヨーク州にあるRoswell Park Comprehensive Cancer CenterがCBDべイプを対象とした研究結果を発表し、次のことが報告されました。
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CBDべイプVSニコチンべイプ
今回の研究では、ココナッツオイルやパームオイル由来の油、中鎖トリグリセリド溶液に50mg/mLのCBD(ナチュラルフレーバー)を溶解したCBDべイプと、合成食品添加物のプロピレングリコールと植物由来油から作られる植物性グリセリン溶液に5.0%のニコチン(バージニアタバコ風味)を溶解したニコチンべイプの二種類の市販製品を比較検討しました。その中で、研究チームは次のことを発見しました。
- 肺の局所病変(組織損傷の領域)の数と重症度は、ニコチンエアロゾルよりもCBDエアロゾルの吸入後の方が大きかった。
- ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性は、ニコチンエアロゾル暴露後よりもCBDエアロゾル暴露後の方がかなり大きかった。*MPOは酵素の一種で、肺細胞の炎症と損傷を促進します。
- CBDエアロゾルを吸入すると、肺の炎症性変化が大きくなり、酸化ストレスが高くなった。
- CBDエアロゾル暴露(44.5%)は、ニコチンエアロゾル暴露(21%)よりも高い割合で精製ヒト好中球が死滅した。*肺の好中球は、細菌、ウイルス、真菌から体を守ります。
- CBDエアロゾルは、ヒト小気道上皮細胞の培養物に対してより毒性が高く、肺上皮バリアの完全性を破壊した。
- CBDエアロゾルを吸入した場合(11,460個)とニコチンエアロゾルを吸入した場合(27,727個)とを比較すると、肺間質マクロファージの数が大きく減少した。*肺間質マクロファージは、炎症を抑え、感染から保護する役割があります。
これらの結果から、研究チームは「CBDべイプの吸引は、肺に重大な障害をもたらすだけでなく、呼吸器感染症にかかりやすくし、予防接種への反応を低下させ、肺の炎症性疾患のリスクや症状を悪化させる可能性がある」と結論付けました。またこの研究を踏まえて、筆頭著者であるThanavala博士は、「医療従事者は、タバコを吸うかどうかを患者に聞くだけでなく、べイプを使用しているか、またニコチンべイプかCBDべイプなのかまで詳細に把握する必要がある」と訴えています。
また、カナビスの疼痛コントロール、睡眠、ガン患者の化学治療による吐き気などの症状緩和、てんかん発作の緩和などの利点が証明されているが、べイプとして摂取した場合の安全性を保証する証拠がないと示唆しています。
まとめ
ニコチン、CBD、ビタミンBなどの成分だけでなく、様々なフレーバーがあり、べイプペンの形もスタイリッシュなものが多く販売されているべイプは、欧米の若者の間で非常に人気の高い製品です。北米では特に高校生から下は小学生までタバコの代わりにべイプを始める人が多く、若い頃から長期に渡って使用すると様々な障害が起こるリスクが高くなるため、政府が若年層でのべイプ使用を控えるように呼び掛けたりしています。
今まではニコチンべイプを対象に研究が行われていましたが、今回CBDべイプを対象とした初めての研究結果ということで非常に注目されています。研究所の生体内で主に行われた実験データなので、これから長期に渡り人体にどのような影響があるのかは、実際の統計データを見ていく必要がありますが、比較的安全だと言われているCBDがべイプを通すとニコチンよりも人体に害が出るという研究結果はカナビス業界に衝撃を与えるものとなりました。ただ、べイプは健康に良いと言われているビタミンBであっても、エアロゾルを肺内に吸入することが肺損傷の原因になるとされているため、短期使用はそれほど害はないかもしれませんが、長期使用は避けた方が良いかもしれません。禁煙するのに長い時間かかるようなら、ニコチンパッチやガムの方が安全でしょう。また、CBDをこれから試したいと考えている人は、オイルやグミ、ロールオンなど現在では様々な種類の製品が販売されているので、べイプ以外の製品から始めるのが良いかもしれません。
参考元:Cleveland Clinic、FoodnHealth、Forbes、Government of Canada、Medical Xpress、News Medical、Roswell Park Comprehensive Cancer Center、Verywell Mind
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