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日本を含む世界の多くの国で禁止されている大麻ですが、その大きな原因がTHCという成分だということは多くの方がご存じだと思います。THCはテトラヒドロカンナビノールの略称で、180種類以上あると言われる大麻に含まれるカンナビノイドの中でも最も多く含まれています。THCには向精神作用があるため危険薬物として認定され、世界中で違法とされています。
それでは、2020年に発見されたTHC-Hという成分はご存じでしょうか。日本のカナビス業界で注目を浴び始めているTHC-Hについてご紹介したいと思います。
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THCとは
THC(テトラヒドロカンナビノール)又はΔ9-THC(デルタ9-テトラヒドロカンナビノール)は、大麻植物に含まれる化学物質で、違法薬物であるマリファナ特有の向精神作用のほとんどに関係しています。私たちの体内にあるカンナビノイド受容体は、思考、記憶、喜び、協調、時間知覚に関連する脳の特定領域に集中して存在しています。THCはこれらの受容体に付着し、受容体を活性化し、人の記憶、喜び、身体の動き、思考、集中力、協調性、感覚、時間知覚に影響を与えます。多幸感、陶酔感、幻覚作用を引き起こす向精神成分で動悸、記憶障害、不安症などの副作用があり、特に中毒性と若いころからの長期使用による統合失調症などの精神疾患リスクが危惧されています。
ヘンプにもTHCは微量(0.3%以下)ながら含まれています。ヘンプに含まれるTHCはΔ8-またはΔ10-THCのことで、マリファナに含まれるTHCはΔ9-THCのことを意味します。
THCとCBDの違いなど詳細はこちらの記事をご覧ください。
THC-Hとは
THC-H(テトラヒドロカンナビヘキソール)は、大麻植物に含まれるカンナビノイドの中でTHC-P(テトラヒドロカンナビフォロール)に次いで2番目に強力な精神作用を持つ物質で、その効力は通常のTHCの25倍と言われています。THC-HとΔ9-THCの分子は同一の構造をしていますが、その配置は異なります。THCには多くのTHC異性体(アイソマー)が存在し、THC-HもTHC-PもTHC異性体の1つです。異性体とは、同じ分子構造でありながらその配置が異なるために起こる、異なった物理的・化学的性質を持つ化合物を意味します。しかし、異なった性質を持つ化合物と言っても、すべてのTHC異性体には、人間の脳に作用して精神を活性化、すなわち「ハイ」にする向精神作用という共通した特徴があります。特にその作用の強さでTHC-Hは話題になっています。
THC-Hはどのようにしてできるのか
THC-Hは、2020年にイタリアの科学者たちによってTHC-Pと共に大麻草から発見、そして分離されました。これらの新たなTHC異性体は今までに大麻草から発見されたTHC異性体の中でも強烈な精神作用を引き起こす最強の化合物だと考えられています。THC-Hは自然に大麻草に含まれていますが、含有量は微量でしかないため現在市場に出ているTHC-H製品は、ヘンプ由来のCBDなどのカンナビノイドをTHCに変換し、それを更にTHC-Hに変換して作られています。
THC-Hの効果
では、THC-Hは人間にどのような効果をもたらすのでしょうか。THC-Hは、Δ9-THCと同じように脳や中枢神経系にあるカンナビノイド受容体1型(CB1)に結合しますが、この受容体への結合親和性はΔ9-THCの25倍という強さがあります。THC-Hの効果に関してはマウスを使った初期研究で、強力な高揚感(ハイな状態)を引き起こすだけでなく、痛み緩和の可能性が示唆されています。メーカーによっては、Δ9-THC同様の治療効果を主張するでしょう。しかし、2020年に発見された時に行われていたマウスを使った動物を対象とした実験の結果のみで、人体への影響や効果を裏付けるにはまだまだ十分なデータがありません。痛み緩和などの治療効果を求めてTHC-Hの使用を考えている人は、更なる研究が行われ、人間に使っても安全であるというデータや報告が出てくるまでTHC-Hの摂取は控える方が良いでしょう。
また、THC-Hを摂取した人からはヘンプ由来のΔ8-THCのような他の異性体を組み合わせて摂取すると、その精神作用が更に強力に感じられることが報告されています。その上、向精神作用が非常に強いため、少量でΔ9-THCのようなハイを感じることができますが、Δ9-THCと同じような摂取量にすると椅子やベッドから立ち上がれない程の作用があるという人もいます。THC-Hを試した人は次のような効果があると主張しています。
- リラックス効果
- 幸福感
- 強烈な多幸感
- 痛みの緩和
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THC-Hの副作用
THC-Hは次のような副作用を引き起こす可能性があります。
- 口の渇き
- 目の充血
- 大幅な食欲増進
- 脱水症状
- めまい
- ふらつき
- 冷や汗
- 動機
- 不安症
- パニック発作
- パラノイア(妄想性パーソナリティ障害)
- 被害妄想
- 精神障害
精神障害などは、THC-Hの大量摂取や精神疾患の病歴がある人に多く見られる副作用です。さらに、THC-Hは他の薬と相互作用する可能性があるため、使用する前に専門家や医療従事者に相談することが大切です。また、Δ9-THCと同様に、めまいやふらつきを引き起こすことがあるため、使用中の機械の操作や運転はやめましょう。
THC-Hの安全性
THC-H製品の安全性に関してですが、現時点で製品そしてTHC-H成分の安全性を保証できるデータなどは何一つありません。最近発見されたカンナビノイドであること、初期研究以来、THC-Hの研究が進んでいないことなどが理由です。また、FDA(アメリカ食品医薬品局)などの公的機関がガイドラインを設定している訳ではなく、ガイドラインが無いということは製品の生産方法、抽出や製造過程で使用する薬品などに規制が設けられていないということなので、各ブランドメーカーがどのように製造しているのか、本当に信頼できるのかなど、余りにも不確かな要素が多いのが現状です。アメリカ国内では州によっていち早くTHC-H製品を販売している業者もいますが、業者サイトや大麻・ヘンプ専門情報サイトなどにある情報はどれも、「安全性を保証できるデータが無いため、製品の選び方や使用方法は自己責任で」という旨が書かれています。
購入を検討されている人は、販売店サイトなどで公開されている成分分析表、および成分分析表に書かれている研究所の評判や信憑性、販売店やブランドメーカーの口コミ情報や評判などを細かくチェックし、THC-Hが服用している薬などと相互作用しないかどうか、持病に悪影響がないかどうかなどを事前に医師や専門家に相談しましょう。
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THC-Hの合法性
アメリカ連邦政府レベルでは、Δ9-THCの含有量が0.3%以下の産業ヘンプを原料とした製品は2018年に合法化されています。しかし、最終的に何を合法とするかは各州の判断に任されているため、THC-Hは2023年1月末時点でアメリカ国内17の州で禁止されています。現在の連邦政府の法律では、Δ9-THCが0.3%以下であれば、Δ8、Δ10、THC-Pなどを含むヘンプ由来のTHC異性体、およびHHCなどのヘンプ由来の成分は合法だという解釈になります。
日本では、THC成分はその向精神作用により原料に関わらず危険薬物として禁止されています。現在は規制されていなくても、Δ8-、Δ9-、Δ10-THC、THC-PやHHCが危険薬物指定を受けたようにTHC-Hも危険ドラッグに指定される可能性があります。
まとめ
2020年にTHC-Pと共に発見されたTHC-Hですが、日本では違法とされるΔ9-THC成分の25倍ほどの強さがあり、これはΔ9-THCの33倍と言われるTHC-Pに次いで2番目に強力な精神作用を持つ成分です。強烈な多幸感(ハイな状態)を引き起こすだけでなく、摂取量が多いとその場から動けなくなったり、パラノイアや精神障害を引き起こす危険性もあります。また、アメリカでは産業ヘンプを原料としていることで合法とされていますが、公的機関でのガイドラインが無いため、その製造方法、抽出に必要な材料や薬品、THC-Hの含有量など各メーカーで大きく異なる可能性もあり、製品の安全性を保証するものは何もありません。また、THC-H成分自体の効能や安全性などに関しても、成分が発見された初期研究以来、大きな研究はまだ行われておらず、圧倒的にデータや情報が少ないため、カナビスの専門家たちは更なる研究が行われ効能や安全性に関してある程度明らかになるまで、使用を控える方が良いとの見方をしているようです。
日本では、THC成分の持つ「向精神作用」が問題なので、遅かれ早かれTHC-H製品もTHC-PやHHCのように危険ドラッグとして認定される可能性が大きいと思います。余りにも安全性に関する情報が少ないため使用はお勧めしませんが、それでも購入を検討されている方は、メーカーと製品の評判、サイトで公開されている成分分析表の信憑性や発行元となる研究所の評判などを細かく調べ、本当に信頼できる会社、製品であるのかを見極める必要があります。Δ9-THCよりも強力な精神作用があるということを念頭に置いて、極少量から摂取するようにします。THC成分に耐性のない方は、過剰摂取や強力な精神作用のために強い副作用を引き起こす可能性があるため注意が必要です。また、THC-Hは他の薬との相互作用の可能性が指摘されているため、持病などで常用薬、または頻用薬がある人は、医療従事者や専門家に事前に相談しましょう。
参考元:CBD Incubator、CFAH、National Library of Medicine
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