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Photo by Louis Reed on Unsplash

2023年5月現在、アメリカでは医療大麻および大麻成分を含んだ製品が合法となっている州は45州あり、大麻(カンナビス)を全面禁止している州はわずか5州です。カナダは2018年から大麻が完全に解禁されており、北米ではCBDを含むカンナビス製品が普及しています。カナダでも、従来からがん治療と併用するためにカンナビスを使用するがん患者は多く存在していましたが、医療大麻の使用許可証が必要で、使用法や量などが厳しく制限されていました。しかし現在では、医師の許可がなくてもカンナビスを使用することができるようになったため、多くの患者ががん治療の副作用や症状の緩和のためにカンナビスを利用しています。また、これまであまり大々的に行われなかったカンナビスの研究も少しずつ進んでいます。

英国ロンドンにある医療従事者を対象として医療大麻のエビデンスに基づいた教育を提供する、International College of Cannabinoid Medicine(iccm.co)の創設者で、オーストラリア、セントキルダにあるReleaf Group Ltd.で最高科学責任者を務めるO’Brien教授は、2022年2月に「Cannabidiol (CBD) in Cancer Management」(がん治療におけるカンナビジオール(CBD)の使用について)という論文を発表し、以下のように結論づけています。

CBDにはストレス緩和、不安の軽減、不眠の改善、抗酸化・抗炎症作用、アンチエイジングまで様々な効果が期待されています。EU初のCBD上場企業「ヘンプリーバランス(Hemply Balance)」が開発した、スイス産オーガニックヘンプ抽出の高品質CBD製品はこちらから購入できます。

カンナビスとは

欧米では、Cannabis(カンナビス)という言葉は、ヘンプを含む大麻植物全体を指します。ヘンプは、酩酊や「ハイ」な状態を引き起こすテトラヒドロカンナビノール(THC)をほぼ含まない特徴があります(0.3%以下)。一方、カンナビス・サティバやインディカにはTHCが多く含まれており、特にTHCが集中している花芽は、世界のほとんどの国で違法薬物として禁止されています。

カンナビスには、現在分かっているだけでも120種類以上のカンナビノイドが含まれています。その中でもTHCとカンナビジオール(CBD)が最もよく研究されています。さらに、栄養素としてフェノール、ステロイド、多糖類、クマリン、グリコシド、フラボノイド、アルコールなどと共に200種類以上のテルペンが大麻草から分離されています。これらは個別にも独自の治療効果がありますが、複数のカンナビノイドや代謝物質が組み合わさることで「アントラージュ効果」と呼ばれる相乗効果が生じることがあります。一方、CBDなど個別のカンナビノイドを分離したアイソレート製品ではアントラージュ効果は期待できません。そのため、CBDアイソレートのみを使用した製品と、CBDと他の代謝物質を含んだブロードスペクトラムやフルスペクトラム製品では作用が異なる可能性があります。

カンナビスには数百種類もの「株」または「品種」があり、主なカンナビノイド、テルペン、その他の植物栄養素の量は品種によって異なります。そのため、品種が異なれば治療効果も異なる可能性があります。

CBDとTHCの違い

THCは、マリファナの特徴である酩酊作用や快感、そして「ハイ」な状態を引き起こす効果があります。一方、CBDにはそのような効果はないので、治療の選択肢として魅力的です。THCとCBDには多くの共通した治療効果がありますが、その作用機序は異なります。

私たちの体内には、カンナビノイド受容体(CB1とCB2)が存在し、カンナビノイドがこれらの受容体に結合することで、細胞内に信号を伝え、さまざまな変化を引き起こします。自然と体内で生成されるカンナビノイドも存在します。例えるならば、カンナビノイドは車の鍵、カンナビノイド受容体は鍵穴で、鍵を鍵穴に入れることでエンジンが起動するように、カンナビノイドが受容体と結合することで細胞内に信号が発信されます。

THCは、カンナビノイド受容体と結合し、作用しますが、CBDはカンナビノイド受容体と直接結合しません。代わりに、CBDは体内のエンドカンナビノイドシステムをサポートし、間接的な方法で活性化したり、他の受容体と相互作用することで効果を発揮すると考えられています。

大麻草から抽出されたカンナビノイドはフィト(植物性)カンナビノイドと呼ばれます。

エンドカンナビノイドシステムとは

エンドカンナビノイドシステム(ECS)は、私たちが持つ最も重要な神経調節システムの一つで、体内のさまざまな機能を調整して正常な状態を維持する役割を果たしています。ECSは以下のような調節を行っています。

  • 免疫系
  • 炎症
  • 痛みや鎮痛
  • ストレス反応
  • 感情や気分
  • 認知機能
  • 記憶と物忘れ
  • 睡眠
  • 消化器官(食事の取り込みや満腹感、胃の保護、吐き気や嘔吐、胃液の分泌、内臓の感覚、消化器官の運動、イオンの輸送、腸の炎症、腸内細菌の増殖の制御など)
  • エネルギーのバランスと脂質およびグルコースの代謝の調節
  • 胎児(胚)の発育
  • 細胞のライフサイクル
  • がん細胞の制御
  • 細胞の保護
  • 神経伝達物質
  • 神経保護
  • 神経可塑性(脳が新しい経験や状況に適応する能力)
  • その他多数の機能

Photo by Tim Foster on Unsplash

がんにおけるエンドカンナビノイドシステム

カンナビノイド受容体は、がん細胞だけでなく通常の細胞にも広く存在しています。研究によれば、カンナビノイドシステムの異常は、がんやがん治療に関連する症状や兆候(不安、うつ病、睡眠不足など)を含む多くの病気の原因の一つである可能性があります。さらに、複数の研究では、エンドカンナビノイドががんの種類によって、がん細胞の増殖を制御または促進する可能性があると示唆されています。

CBDの抗がん作用メカニズム

多くの研究から、さまざまなカンナビノイドが抗がん活性を持ち、がんに関連するさまざまな症状に対処できることが分かっています。カンナビノイドは、アポトーシス促進作用や抗増殖作用などを通じて、さまざまながんの異常な細胞の死を促進することが実証されています。特にCBDは、動物の研究において神経膠芽腫、乳がん、肺がん、前立腺がん、結腸がん、黒色腫など、さまざまながんの進行を抑制する可能性が示唆されています。アポトーシスとは、皮膚細胞が定期的に生まれ変わるように、個体をより良い状態に保つために積極的に引き起こされるプログラムされた細胞の死を意味します。

ただし、注意すべき点は、これらの研究でCBDやTHCのアイソレートが使用されていることです。アイソレートではなく、フルスペクトラムやブロードスペクトラムなどの全植物抽出物を使用したCBD製品の効果を調査するためには、さらなる研究が必要です。

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がんやがん治療に関連する症状や兆候に対するCBDの有効性について

がん患者は、がんそのものや治療に関連するさまざまな兆候や症状に苦しんでいます。以下に、その例を挙げます。

不安:エンドカンナビノイドシステムのシグナル伝達はストレス反応の調節に関連しており、不安障害などはストレス反応の機能不全に関連していることが分かっています。前臨床および臨床研究では、CBDの抗不安作用が実証されていますが、低用量や高用量では効果が見られないことも分かっています。

うつ病:がんの重症度や痛み、倦怠感などの症状が悪化すると、うつ病の有病率も上昇します。また、慢性うつ病はがんのリスク増加とも関連している可能性があり、がんの進行と死亡率にも影響を及ぼす可能性があります。動物を用いた前臨床研究では、CBDがうつ病、ストレス、不安の自律神経指標を軽減できることが明らかになっています。

不眠症: がん患者の20%~75%が睡眠障害を抱えていることがわかっています。不眠症や睡眠障害は、倦怠感やうつ病などを引き起こし、免疫抑制の原因になる可能性があります。CBDが睡眠の改善に効果があるとする研究結果もありますが、同時に覚醒作用があると示唆される研究結果もあります。がん患者におけるCBDの睡眠改善効果については、さらなる研究が必要です。

吐き気や嘔吐: 化学療法の副作用である嘔吐には、効果的な医薬品がありますが、吐き気に対してはそれほど効果がありません。がん治療に関連する吐き気や嘔吐とカンナビスの研究の多くは、合成THCであるドロナビロールやナビロンなどを使用して行われています。しかし、動物研究ではCBDが特定の用量範囲内で吐き気と嘔吐を抑制することが明らかになりました。また、カンナビジオール酸(CBDA)は、急性および予期性の吐き気に対してCBDよりも1000倍強力な軽減効果があると示唆されています。これらを確認するためには、CBDを主成分とした製品および人間を対象としたさらなる研究が必要です。

痛みと神経障害: がんに関連する痛みや神経障害についての研究の多くは、CBD単体ではなくTHCまたはTHCとCBDの組み合わせ製品に焦点を当てています。複数の研究により、どちらも平均的な痛みの軽減効果が示されています。抗がん剤であるパクリタキセルは神経障害性疼痛を引き起こす可能性がありますが、マウスを用いた研究ではCBDがパクリタキセルによる過敏症を予防することが判明しています。

口腔粘膜炎: 口腔粘膜炎は、がん治療を受ける患者の30%~80%が経験する一般的な副作用であり、食事や体重減少、栄養不良、感染症、生活の質の低下などの原因となります。CBDには抗酸化作用、抗炎症作用、鎮痛作用があり、口腔粘膜炎の発症を予防する可能性がありますが、この分野に関する研究データが不足しています。マウスを使った研究では、CBDを腹腔内投与することで、炎症や酸化ストレス、病変を軽減し、組織の修復を促進することが明らかになりました。口腔粘膜炎に効果的な医薬品がほとんどないため、CBDの効果を研究する必要があります。

悪液質: がんによる死亡の約20%は悪液質が原因と考えられています。腫瘍によって炎症を引き起こすサイトカインと抗炎症作用のあるサイトカインのバランスが崩れ、食欲不振、体重減少、筋肉や脂肪の異常な減少、貧血、無力感などが悪液質と呼ばれます。カンナビノイドを使用したがんの悪液質治療の研究では、THCが食前の食欲とタンパク質として消費されるカロリーの割合を改善する一方で、THCの酩酊作用により生活の質が低下することが明らかになりました。CBDには抗炎症作用があり、炎症を引き起こすサイトカインと抗炎症作用のあるサイトカインのバランスを整える役割が推測されますが、これを実証するにはサイトカインに関するさらなる研究が必要です。

緩和ケア

がんの終末期における緩和ケアには、THCを含む大麻製品が特に有用です。イスラエルでの研究では、対象となった緩和ケアを受けるがん患者の95.6%が症状の改善を報告しました。改善された症状の中で最も多かったのは、吐き気と嘔吐(91%)、睡眠障害(87.5%)、むずむず病(87.5%)、不安とうつ(84.2%)、かゆみ(82.1%)、頭痛(81.4%)でした。また、35.1%の人が鎮痛剤、解熱剤、睡眠薬、鎮静剤、ステロイド、オピオイドなどの薬の摂取量が減少したと報告しました。6ヶ月の追跡調査では、大麻製品の副作用としてめまい、口渇、眠気、精神活性が最も一般的であることがわかりました。研究者は、大麻の使用ががん患者の緩和ケアにおいて症状の管理に役立つ可能性が高いと結論付け、効果的で安全な選択肢であると述べています。

Photo by Kimzy Nanney on Unsplash

CBDと従来のがん治療との組み合わせ

CBDまたはCBDとTHCの混合は、さまざまな化学療法剤と一緒に使用することで、薬の効果を高めるという科学的な証拠が増えています。THCには多くの抗がん作用があり、化学療法剤の効果を増強する可能性が示唆されている研究がたくさんあります。高用量のTHCは酩酊感を引き起こす可能性がありますが、CBDとTHCの混合を使用する研究では、CBDがTHCの抗がん作用を強化し、THCの使用量を減らしても同等の効果が得られることがわかりました。また、望ましくないTHCの副作用(酩酊感など)を軽減する可能性も示唆されています。

神経保護作用

CBDは、がんの放射線治療や化学療法によって正常な神経組織が損傷を受けるのを防ぐ神経保護作用があると考えられています。また、ある研究では、CBDがY放射線の効果を増強することがわかり、CBDとTHCの混合を使用することでより少ない放射線量で治療する可能性が示唆されました。

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臓器保護作用

動物研究によれば、CBDは化学療法による毒性から臓器を保護する可能性が示されています。

注意しなければならないこと

カンナビスは多くの研究で効果が証明されていますが、カンナビスと免疫療法に関しては注意が必要です。カンナビスを使用する患者は、使用しない患者と比べて免疫療法の効果が低下することがわかっています。また、薬とCBDの相互作用も重要であり、特にCBDは酩酊作用がなく、がん患者に好まれますが、免疫療法薬との相互作用についてはさらなる研究が必要です。

腫瘍学での大麻使用に対する障壁

医師のカンナビスに関する知識不足が従来の治療法に大麻を導入する障壁となるケースが多くあります。他の障壁には以下のようなものがあります。

  • カンナビス製品が従来の医療制度では手に入りにくいこと
  • CBDと大麻製品の標準化や基準化が不十分なこと
  • 製品品質のばらつきがあること
  • 大麻がほとんどの国で違法薬物とされていること
  • 多くの国でカンナビノイド薬に精通した薬剤師がいないこと。

患者により良い医療を提供するために、臨床医は少なくとも医療大麻に関する知識を深め、患者に有益な情報を提供する義務があります。

まとめ

CBDは大麻植物の主成分であり、THCのような酩酊作用はありません。CBDにはさまざまな成分や摂取方法、大麻の品種に基づく異なる製品がありますが、CBDアイソレート製品と他のカンナビノイドや栄養素を含むブロードスペクトラムやフルスペクトラム製品では、異なる効果が示されることがあります。前臨床研究や臨床結果からは、CBDががんに関連する症状や兆候、一般的ながん治療に効果があるという証拠が得られており、世界中のがん患者が医療大麻が合法化されている国でカンナビス製品を使用しています。カンナビスおよびCBDはがん患者の包括的なケアと治療において重要な役割を果たす可能性があるため、腫瘍学者を含む医療従事者はそれを認識し、広い心で対応する責任があります。

出典:O’Brien K. Cannabidiol (CBD) in Cancer Management. Cancers. 2022; 14(4):885. https://doi.org/10.3390/cancers14040885

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